FAQ よくある質問

質問一覧

下記の質問内容をクリックすると、回答をご覧いただけます。

胃・十二指腸潰瘍とピロリ菌感染

Q.胃・十二指腸潰瘍とピロリ菌感染の関係を教えて下さい

潰瘍の治療は、制酸剤と粘膜保護剤での治療が一般的です。
現在の薬は胃酸分泌を強くおさえるため潰瘍治癒率は高く手術や入院治療は激減しました。
しかしながら、服薬をやめると高率に再発をきたすため長期間の服薬が必要でした。

最近の研究で、消化性潰瘍の主な原因としてピロリ菌感染が明らかとなりました。
ピロリ菌感染があると必ず潰瘍になるわけではありませんが、胃・十二指腸潰瘍の95%以上にピロリ菌感染がみられます。
また、ピロリ菌を除去すると服薬なしでもほとんど再発しないことが明らかとなりました。

我が国では、平12年11月に胃・十二指腸潰瘍に対してピロリ菌を除去するための「除菌療法」が保険医療として実施できるようになりました。
除菌療法は、3種類の薬剤を1週間服用するだけの治療で外来通院で可能な原因療法です。
今後の潰瘍治療は、「除菌療法」が中心となりますが、除菌が成功しない場合や除菌後の再発もまれにみられます。また、ピロリ菌感染と胃炎・胃ガンなどの関連も検討されています。 「除菌療法」は専門性を有した治療ですので、内視鏡検査のできる専門医にご相談することをおすすめします。

上記の「お腹の病気」もご参照下さい

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胃食道逆流症

Q.胸やけがよくします。胃食道逆流症とはどのような病気ですか

胃食道逆流症は、生活様式の欧米化や高齢化により頻度が増加しています。胃酸の食道への逆流は正常者でもみられますが、食道の弛緩や排出機能の低下などで頻繁に逆流が生じ、胸やけなどの症状がある場合は治療の対象となります。
胸やけ以外の症状は咽頭部異和感・胸部痛・嚥下痛などがあります。また、見逃されやすい症状として喘息様の呼吸や夜間の咳もみられますが、これは逆流した酸が気道を刺激しおこります。

胃食道逆流症は、食道粘膜の炎症性変化を引き起こし、場合によっては潰瘍を形成しますが、症状がありながらも炎症の変化がない場合もみられ的確な判断が必要となります。

治療は、制酸剤と消化管機能改善薬を主体とした薬物療法が中心ですが、肥満の改善・食事内容・食後の体位・食事から就寝までの時間・アルコール摂取や喫煙などの生活習慣の改善なども必要となります。

診断には、粘膜の変化を直接観察する内視鏡検査が重症度を判断をするうえでも重要です。

漫然と症状のみから投薬を受け、通過障害をきたす疾患を見逃されている場合あり、胸やけなどの症状がある方は、内視鏡検査のできる専門医への受診をおすすめします。

上記の「お腹の病気」もご参照下さい。

大腸ポリープと大腸ガン

Q.大腸ガンを早期に発見するためにはどうしたらよいでしょうか

大腸ガンは、食生活の変化より増加しています。

大腸ガンの早期発見にもっとも正確な検査は大腸の内視鏡検査です。
便潜血検査は『小さなポリープや早期ガンの多くは出血せず見逃されやすい』などの問題点があります。
また最近の研究で、大腸の早期ガンには、バリウム検査で発見しにくい「平坦なガン」が意外に多いことがわかっています。

次に、大腸ガンを予防するためにはどうしたらよいでしょう。
最も効果の高い確実なことは定期的に内視鏡をおこない、ポリープのうちに切除することです。
大腸ガンの多くは大腸ポリープが源である事がわかっています。
大きなガンでは手術が必要となり、しかも再発の危険もありますが、ポリープの段階でしたら内視鏡で簡単に切除できます。
実際に米国でおこなわれた大規模な研究で『ポリープ切除によって大腸ガンが予防できる』ことが証明されています。
以前にポリープ切除を受けた方は1年ごと、ポリープが多発している方や・組織検査の結果によっては数ヵ月ごとに検査をすすめるのが一般的です。

当クリニックでは、希望の方には鎮静剤を使用し内視鏡検査時の苦痛を緩和するよう心がけていますので一度ご相談下さい。

上記の「お腹の病気」もご参照下さい

【写真付で内視鏡治療の模様を解説していますのでご覧下さい】

 

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胃ガン死亡率減少の理由

Q.胃ガンの死亡率が減少しているそうですが、その理由は?

戦後、日本人の胃ガン死亡率は減少しました。最大の理由は検診が盛んになり、胃カメラの進歩により早期発見が増えたためです。

胃ガン検診は、バリウム検査が多く行われていますが、専門的には精度に格段の違いがあるため、いまや胃カメラが主役となっています。
以前は、早期ガンもすべて手術をしましたが、最近は胃カメラにより『更に小さな早期ガン』が見つかるようになり、胃カメラでガンを切除してしまうことも可能になりました。
ただし、これは非常に早期のガンに対してのみ可能なことです。『更に小さな早期ガン』で発見するためには、定期的に専門医による検診を受ける必要があります。

胃ガンは、「手術で治す」から「切らずに内視鏡で治す」になり、現在では、ピロリ菌を除菌することで「胃ガンを予防する」段階へ研究は進んでいます。

不惑(40才)以上の方には胃ガンの発生にも関係が疑われるピロリ菌が3割の方にみられますので惑わず定期検診を受けることをおすすめします。

当クリニックでは、希望の方には鎮静剤を使用し内視鏡検査時の苦痛を緩和するよう心がけていますので一度ご相談下さい。

上記の「お腹の病気」もご参照下さい

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飲酒と喫煙は食道ガンの危険因子

Q.飲酒と喫煙をすると食道ガンの危険が増加するとききましたが…。

食道ガンは、近年増加傾向にあるガンのひとつです。

食道にガンが出来る理由は解明されていませんが、その原因の一つと考えられているのが、飲酒と喫煙です。ある調査によると「酒1合半、タバコ20本」を30年間続けた人の食道ガンの発生率は、どちらもやらない人の30倍といわれています。アルコールに含まれる化学物質やタバコに含まれるニコチンやタールなどが食道の細胞を刺激し続け、ガンを引き起こすと考えられています。さらに、アルコール代謝酵素の少ない方は、少量の飲酒でも食道ガンのリスクが高くなります。

また、強い胃酸が食道に逆流して炎症を繰り返す逆流性食道炎や、香辛料・塩辛いものの摂取や、熱い飲食物の嗜好なども食道の細胞を傷つけ、食道ガンを発生させる危険因子と言われています。

食道ガンの発生比率は、男性6に対し女性は1で男性に多くみられます。しかし、たとえ女性でも、お酒とタバコをたしなむ人の危険性は、決して低くありません。

食道ガンは内視鏡検査の際にルゴールという染色を行うとかなり微小なものでも診断可能です。 飲酒と喫煙をされる方は、定期的に内視鏡検査を受けることをおすすめします。

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ピロリ菌除菌で胃ガン減少

Q.ピロリ菌除菌で胃ガンになりにくくなるのですか

胃潰瘍と密接な関連があるピロリ菌は、胃ガンとも関連し、除菌による予防効果が期待されています。今回は、除菌による胃ガン予防に関する研究を2件紹介します。

1件目は北海道大学の報告で、約3400人の患者さんをを5年以上調べています。その結果、除菌未施行群では3.5%で胃ガンが発症したのに対し、除菌群では1.1%で、除薗によって胃ガン発症が1/3以下に抑えられました。

2件目は中国の報告で、除菌未施行群では1.35%で胃ガンが発症したのに対し、除菌群では0.86%との結果が得られています。また、ピロリ菌による慢性胃炎の変化が軽度であるほど胃ガンの発生率が低下するとも報告しています。

胃ガンは、ピロリ菌に感染した慢性胃炎を基盤にして発生すると考えられていますが、これらの研究により、除菌による胃ガンの予防効果が明らかになりました。

胃ガンは、ガンの死因の第2位で、年間約5万人が死亡しています。以前は「胃ガンの家系」などと言われていたものも、実はピロリ菌による影響かもしれません。

40歳以上では3割の方がピロリ菌を保有していると言われていますので、慢性胃炎が高度になる前に、専門医で検査することをおすすめします。

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胃ポリープ

Q.胃にポリープがあるといわれました。検査はどうしたらよいでしょうか

胃ポリープは粘膜の細胞が異常増殖した突起物で、きのこ状のものや、根もとが広いものがあります。

症状はありませんが、大きくなると出血や、食物の通過障害をおこすことがあります。

大部分は「過形成性ポリープ」や「胃底腺ポリープ」でガン化の心配ありません。しかしながら数%に「腺腫」というものがあり、大きくなるとガン化の危険があるため、定期的な経過観察が必要です。また、「ポリポージス」というポリープが多発する疾患では胃以外にも病変があり、治療が必要なものもあります。

「過形成性ポリープ」は胃炎を背景に発生すると言われ、胃炎の主な原因のピロリ菌の除菌療法が有効との報告もあります。また、一部のポリポージスは遺伝性です。その他のポリープの原因は不明です。

一口に胃ポリープといってもガン化の心配のないものだけでなく、「腺腫」やポリープ状に見える「ガン」もあり、問題を複雑にしています。対処の方法も治療が必要なもの、経過観察が必要なもの、放置して良いものがあり、組織型や大きさ・個数など症例ごとで異なります。

従って、内視鏡検査でポリープの状態を確実に把握し、組織の-部をとる組織検査が重要となります。

上記の「お腹の病気」もご参照下さい

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クローン病と潰瘍性大腸炎

Q.子供のころからよくお腹をこわします。最近では、時々便に血が付くこともあり、体重も減っています。近医で炎症性腸疾患かもしれないといわれましたが、どのような病気なのでしょうか

クローン病や潰瘍性大腸炎という病気をご存じでしょうか。これらは炎症性腸疾患と呼ばれ(その他の稀な病気も含めて)、特定疾患の指定をうけています。

原因として細菌感染や免疫異常が疑われていますが解明されていません。いずれも腹痛・下痢・血便・体重減少などの症状があります。

クローン病は小腸の末端部を主体に口から肛門まで色々な部位に、潰瘍性大腸炎は大腸に、潰瘍や炎症を起こします。また、腸以外の場所(関節・皮膚・眼など)にも合併症がみられることがあります。

発症年齢は若年層を中心に、最近では高齢者の発症例もみられ、食生活の欧米化に伴って年々増加しています。

残念ながら原困不明のため、治りにくい病気の一つですが、軽症のうちに診断されれば栄養療法や薬物療法で比較的安定した状態をえられます。 一方、重症化すると腸を切除する外科的治療や特殊な治療が必要な場合もあります。また、長期経過した潰瘍性大腸炎には発ガンの可能性も論じられています。

一般内科では診断にたどり着くまで時間がかかることもあり、慢性の下痢や腹痛、体重減少などがある方は、一度専門医での検査をおすすめします。

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過敏性腸症候群

Q.過敏性腸症候群とはどのような病気ですか

この疾患は、腸が正常に機能しない疾患で、ストレス社会を反映し小児から高齢者まで広くみられます。

症状により、腹痛とウサギの糞のような便が出る「便秘型」、腸の動きが活発となり慢性の下痢がつづく「下痢型」、下痢と便秘が繰り返される「交代型」の3型に分類します。その他にも自律紳経失調の症状、不安感や抑うつ感などの精紳症状を伴うこともあります。

このような症状は、不安や精神的ストレスがある時に出やすくなります。ストレスを受けると自律神経を介して腸管の運動異常が誘発され症状が出現するのです。ですから、ストレスがないときには症状があまりでません。

治療は、医師との信頼関係のもとに症状に応じて進めることが必要です。回復へのポイントはストレスの悪循環を断ち切ることで、十分な睡眠・休息をとりリラックスし、プラス思考で上手に疾患と付き合うことが大切です。

それでも改善がみられない場合は、食事療法や腸管運動調整剤・自律紳経調整剤・抗不安薬などの薬物療法が必要となります。

診断には、消化管の検査で腫瘍や潰瘍などの病変がないことを確認することが必要であり、症状のある方は専門医への受診をおすすめします。

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慢性肝炎

Q.ウイルス性の慢性肝炎と診断されました。今後、どのような検査や治療をうけたら良いでしょうか?

慢性肝炎とは、肝臓の炎症が6ケ月以上続いている状態で、原因の多くはB型・C型肝炎ウイルスによります。
症状のない場合が多く、知らない間に肝硬変や肝臓ガンまで進んでいることあります。

採血では肝機能と腫瘍マーカーを定期的に測定することが重要です。
超音波検査は、肝臓ガンの早期発見にも役立ち3~4カ月毎の検査が必要で、6~12ケ月毎にCT検査を行うことも重要です。(トップページの「おなかの病気あれこれ」の「肝臓ガン」も参照下さい)

B型肝炎の治療は年齢によって大きく2つに分かれます。
35歳未満の方は、自然経過でセロコンバージョンが期待できるためインターフェロン療法を優先させます。
自然経過で予後の改善しない35歳以上の方は、核酸アナログ製剤の投与を行います。
核酸アナログ製剤は毎日服用することにより強固なウイルス増殖抑制作用をもつ反面、一度止めるとウイルスの再燃増殖が生じて離脱が困難であることと、長期投与でその薬剤に効かなくなる耐性ウイルスが出現するという短所があります。
B型慢性肝疾患の核酸アナログ製剤による治療は、耐性ウイルスが出現した際の薬剤の変更や長期にわたる投薬管理が必要ですので、是非、肝臓専門医である当院に御気軽に御相談ください。

日本肝臓学会では専門医の告示を行っていますので、受診の目安にしてはいかがでしょうか。(肝臓学会専門医3681号)

 

C型肝炎の新たな治療

Q.C型肝炎の新しい治療について教えて下さい

C型慢性肝炎は早期発見が出来れば、治療によりその進行を防ぐことができます。
そのためには肝臓の炎症の原因になるウイルスを駆除するか、あるいは、それが不可能な場合は肝臓の炎症をおさえて病気の進行をとどめることが必要となります。

1992年よりC型慢性肝炎の治癒を目指し、インターフェロン療法が開始されました。インターフェロンはHCVの増えるのを抑えて駆除する薬です。筋肉注射と静脈注射の2種類の薬があります。しかし、かつてインターフェロン単独での効果は30%程度でした。

HCVには、ウイルスの型に1型、2型があり、さらに、ウイルス量が高いタイプと低いタイプがあります。日本に多いのは、1型・高ウイルス量のタイプですが、この型に対し、インターフェロンは、5%程度の効果しか発揮できませんでした。

その後、2000年にインターフェロンに内服薬のリバビリンを併用する治療が始まりました。2003年には長時間効果を発揮するペグインターフェロン(PegIFNα)の単独療法が承認され、2004年よりペグインターフェロンとリバビリンの併用療法が開始されました。

ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法ではペグインターフェロンの皮下注射(週一回)とリバビリンの服用(毎日)を48~72週間続けることでウイルスの型が1型・高ウイルス量の難治性C型慢性肝炎でも40~70%の症例でウイルスを排除することが可能になりました。

また、2011年にはプロテアーゼ阻害剤(テラプレビル)が承認され、3者併用療法(ペグインターフェロン+リバビリン+テラプレビル)が開始され、これまでの治療法で駆除できなかったHCVウイルスの排除が可能になりました。

さらに、2013年には副作用を軽減した新たなプロテアーゼ阻害剤(シメプレビル)が承認され、より安全な3者併用療法(ペグインターフェロン+リバビリン+シメプレビル)が開始されました。

そして、2014年に経口2剤(ダクラスビル+アスナプレビル)治療が承認されました。インターフェロンを用いない(IFNフリー)でC型慢性肝炎を治療することが可能になりました。

直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals:DAA)とよばれるもので、C型肝炎のウイルスに直接作用して増殖を抑えます。DAAは、患者さんに対する負担は少なく副作用はほとんどありません。IFNの副作用で治療ができなかった方にも使用でき、8~12週の内服で、ほとんどの患者さんが治癒します。副作用もほとんどなく、また慢性肝炎から代償性肝硬変(肝硬変でも肝機能が保たれている段階)まで投与可能です。

なお、C型肝炎の治療は、所得に応じて医療費助成が受けられます。詳しくは、地元の保健所等に問い合わせてください。

肝硬変

Q.肝硬変について教えて下さい

肝硬変は、慢性の肝障害の終末の状態で、原因としては、ウイルス性とアルコール性が多数を占めます。
肝細胞の炎症が持続することで線維が増え硬くなり、肝臓内に結節を形成します。
この結節が肝臓内の血管を圧迫して血行が変化し、門脈圧の上昇や肝血流の減少などが起こり、さらに肝細胞の障害を増悪させるという悪循環が起こります。

わが国では肝硬変の患者さんの数は約30万人と推定されています。

特徴的な自覚症状はありませんが、色素沈着・毛細血管の拡張・手のひらの紅斑などがみられ、進行すると、黄疸・食道胃静脈瘤(トップページの「おなかの病気あれこれ」の「食道静脈瘤」も参照下さい)・腹水・肝性脳症などが出現します。さらに、肝硬変には肝臓ガンが合併しやすくなります。

治療法の進歩により、黄疸や腹水などの肝不全・食道胃静脈瘤出血・肝性脳症などによる死亡数は減っていますが、ガンによる死亡数は20年間で約2倍に増加し、大きな問題となっています。

肝硬変の治療には、血液検査だけではなく、胃カメラや画像検査などの専門的な知識と経験が必要となります。

日本肝臓学会では専門医の告示をしていますので、受診の目安にしてはいかがでしょうか。(肝臓学会専門医3881号)

原発性胆汁性肝硬変と自己免疫性肝炎

Q.以前より、肝臓が悪いといわれています。ウイルス肝炎ではないようですが原因がわかりません。ほかにどのような病気があるのでしょうか

ウイルス肝炎以外2つの病気について説明します。

原発性胆汁性肝硬変

この病気は、肝臓内の胆管の慢性炎症のため、胆汁が停滞しおこる病気で、進行すると胆汁性肝硬変になります。
原因は自己免疫の関与が考えられ、慢性関節リウマチ・慢性甲状腺炎などを合併することもあります。
中年女性に多く、患者数は約12000人と推定されています。
検査では、肝・胆道系酵素の異常のほかに、IgMの上昇、抗ミトコンドリア抗体が陽性となります。

症状は、黄疸やかゆみが特徴ですが、最近は肝障害をきっかけに無症状での診断例が増えています。
肝硬変と名づけられていますが、診断された方すべてが肝硬変になっているわけではなく、実際に肝硬変の状態であるのは10%程度です。 治療は、ウルソデオキシコール酸などの内服薬が用いられます。
肝硬変になると、浮腫・腹水・食道胃静脈瘤・肝性脳症などが現れます。
進行して肝不全状態に陥り高度の黄疸が持続する場合は、肝移植治療を検討することもあります。

 

自己免疫性肝炎

この病気の原因は不明ですが、免疫異常が関与する慢性肝炎です。
中年女性に多く、患者数は約6000人と推定されています。
検査所見では、肝障害のほかに高ガンマグロプリン血症、IgGの上昇、抗核抗体をはじめとする自己抗体の陽性所見が特徴的です。
特徴的な症状はなく、甲状腺疾患やリウマチなどの自己免疫性疾患が合併する場合もあります。
病気が進むと肝硬変になりますが、ウイルス性に比べ肝細胞ガンの合併は少ないとされています。
治療には、ステロイドが用いられ、殆どの患者さんで肝機能は正常化しますが、肝臓の炎症はすぐに改善するわけではないので長く続けることが大切です。
ステロイドの自己中止は肝炎の再燃につながり、きちんと服用することが大切です。
ある調査では治療をきちんと受けている場合、10年の経過では殆ど進行はなく、死亡率も高くありません。

胆石

Q.胆石について教えて下さい

胆石とは、胆道にできる石や胆泥の総称です。
石の成分の違いから胆嚢に多いコレステロール結石と、胆管に多いピリルビン結石とに分けられます。

古代にも胆石に苦しんだ人がいたようで紀元前のミイラからも胆石が発見されています。
日本では以前は、ピリルピンカルシウム石が多かったのですが、食生活の欧米化に伴いコレステロール結石が増加しています。

症状は、食後に右上腹部痛や、放散痛といわれる肩から背中にかけての痛みが典型的ですが、なかには鈍い胃痛や腰痛で受診されることもあります。
また、胆石があっても症状のない人もいます。
黄疸や発熱がある場合は、胆道炎や急性膵炎を併発している可能性もあります。

血液検査では症状のない場合には異常がみられないこともあり、苦痛のない腹部超音波が検査としては最も有効です。

治療は、胆石の状態により溶解療法・内視鏡的砕石術・ショックウェーブ・胆嚢摘出術などから最も適した方法を選択します。

無症候性の場合でも胆嚢ガンを合併する場合があり定期的に超音波検査をする必要があります。

症状のある方や胆石の存在を確認されている方は専門医への受診をおすすめします。

脂肪肝

Q.脂肪肝といわれました。定期的な検査は必要ですか

画像診断の進歩により脂肪肝と診断されている方は多いと思います。
超音波検査では肥満者の半数以上に脂肪肝がみられ、脂肪肝と肥満は密接に関連しています。

近年、脂肪肝を基礎疾患とし、飲酒歴がないのにアルコール性肝障害に似た変化をきたす非アルコール性脂肪肝(NASH)が注目されています。
NASHの半数は進行性であり、肝硬変に進展する頻度は10年間で約20%とされ、肝細胞ガンの発生も注目されています。
また、肥満や糖尿病、高脂血症の方では発生率が高まります。
このため、「脂肪肝を良性の疾患として見過ごしてはいけない」とされています。

本邦でも肥満人口が増加し、15歳以上の肥満者は男・女とも1000万人以上で、高度肥満者は250万人に上り、数十万人のNASH患者が推計されるとの報告があります。
また、若年者層の肥満人口も増加していますが、NASHの1割は10代の若年者が占めています。

今後も、脂肪肝の増加は予想され、肥満者の糖尿病・高脂血症がNASH増加の原因になると考えられます。
今まで「脂肪肝だから」と放置していた方も、専門医での定期的な検査をうけることをおすすめします。

肝のう胞

Q.超音波検査で肝のう胞といわれました。治療の必要はないのでしょうか

この病気は、肝臓の占拠性病変でもっとも多く、超音波を行うとかなりの頻度で見つかります。

肝臓が作られる時に、胆汁が出ていく胆管になる細胞がうまくつながらず、肝臓の中に取り残されたものが原因となり、胆汁に似た水分が充満した「水袋」の状態となっています。

単純性と遺伝性に大別されます。単純性では数個程度のことが多いのですが、遺伝性では肝臓全体に多発し、腎不全の原因となる多発性腎のう胞や、クモ膜下出血の原因となる脳底動脈瘤を合併します。

大半は超音波による経過観察でよいのですが、まれに大きくなるものがあり、ある程度の大きさになると膨満感や早期満腹感などの圧迫症状がおきたり、肝臓内の胆管を圧迫して黄疸を起こしたりします。
また、のう胞内に出血や感染を起こすこともあります。
このような場合には、内容液を抜いてアルコールなどを入れて治療します。
また、遺伝性の場合は脳検査や定期的な腎機能検査が必要となります。

この他に、一般的な肝のう胞とは異なる原因(腫瘍、寄生虫)で発生することもあり、必要があれば精密検査を受けられることをおすすめします。(肝臓学会専門医3681号)

機能性胃腸症

Q.胃もたれや膨満感があり、胃カメラを受けましたが異常はありませんでした。胃薬を内服しても症状は変わりません。どうしてなのでしょうか?

日本人の4人に1人が胃の不快に悩んでいるといわれています。
症状は、「もたれや吐き気」が全体の7~8割、「胸やけ」が1割強、残りが「痛み」です。
一般に、胃に不快がある場合、胃の病気が疑われますが、実際に内視鏡を行なっても、約半数に異常はみられません。
つまり、胃に炎症や潰瘍がなくても、症状を訴える患者さんが多くみられます。
このような場合「慢性胃炎」などと診断されていましたが、最近では、「機能性胃腸症」と呼ばれています。
「機能性胃腸症」の症状は胃部膨満感、悪心、食欲不振、胃もたれ感などで、胃カメラなどでは異常はみられません。
「もたれ」が中心の「運動不全型」・「痛み」が中心の「潰瘍症状型」・「胸やけ」が中心の「逆流症状型」の3タイプに分類されます。
胃の緊張・排出低下にともなう胃排出遅延によりおこる機能的な病気と考えられています。

検査で異常がなく、胃薬を内服しても改善しないため、ほかの病院で再検査をうけてもやはり異常はない。
「機能性胃腸症」の患者さんにはそのような方が多くいます。

まず、原因となっている食習慣や食事内容、あるいはストレスなどを見直すことが第一です。
食事はゆっくり、よく噛んで、適量を食べます。
食べすぎは、胃の過伸展をおこすのでよくありません。
また、食後すぐに横にならないことも重要です。
さらに香辛料、コーヒーなどはさけましょう。
それでも効果がない場合は、潰瘍などの可能性もあるので精密検査を受けて下さい。
機能性胃腸症は症状に合った内服をすれば、かなり症状を改善することができます。
それでも改善しないときは、ストレスの影響を考慮し、軽い安定剤などを用いることもあります。
しかし、一度治まっても、根本的な原因を見直さない限り、再発が起こります。
まず、自分の食習慣や日常生活を見直し、効果がない場合は医師に相談して下さい。

この病気の診断にはガンや潰瘍などの器質的疾患がないことの確認が必要です。胃もたれや膨満感がある方は、一度専門医への受診をおすすめします。

無痛性内視鏡

Q.苦痛のない内視鏡検査が出来ると聞きましたが

消化器疾患の日常診療の中で、内視鏡検査は今や必要不可欠なものですが、患者さんからみるとまだまだ苦しい検査の一つです。
当クリニックでは、最も細いカメラを導入していますが、それでも、特に咽頭反射の強い患者さんや、痛みを感じやすい患者さんには辛い検査となることがあります。

そのような患者さんでも、鎮静剤を投与し眠っている状態にすることで、苦痛をほとんど感じることなく検査を行うことができます。
現在、当クリニックで内視鏡検査を受けられる患者さんの9割以上の方が無痛性検査を希望されています。

検査時には心肺モニターを用いて呼吸循環器系の変化に注意を払います。
検査終了時や、万が一、呼吸・循環抑制などが強くでた場合には、直ちに鎮静作用を打ち消す薬を投与すれば、その場で覚醒します。

このように注意深い観察と十分な副作用対策を行うことで、苦痛のない内視鏡検査を安全に行うことができます。
患者さんへの注意点として、若干眠気などが残ることもあるので、検査当日は自動車の運転や重要な仕事は避けほうが良いでしょう。

苦しい検査は、患者さんを必要な検査から遠ざけ、早期発見、早期治療の道を閉ざします。
胃と大腸については定期的に内視鏡検査を受けることによって、積極的にガンなどの生活習慣病を、予防していくことが大切です。

便検査で大丈夫?

Q.最近、排便が不規則で下痢をします。近くの病院で便検査の指示を受けましたが、便検査だけで大丈夫でしょうか?

便検査は、大腸ガン検診として普及していますが…。 「出血している病気」、つまりある程度の大きさのガンでないと陽性にならず、早期ガンは出血しないことが多く見逃されやすい、という大きな問題があります。

大腸ガンは進行ガンでも、手術で助かることが多く、「大腸ガンの死亡を減らす」という便検査の意義はあります。
しかし、「内視鏡で治療可能な早期ガンでの発見」という願望をかなえるには不十分です。

専門医は、このような問題点から、便潜血検査を勧めることはあまりありません。
便通異常などの症状がある方は、最初から検査をされた方がよいでしょう。

次に、便検査が陽性の場合ですが、痔でも陽性になるので、直ちに悪い病気を心配する必要はありません。
しかしながら、もう一度、便検査をおこなうのは無意味で、すみやかに検査をおこなうべきです。

大腸の内視鏡検査は、もっとも精密な検査であり、同時に大腸ガンの原因となりうるポリープも切除できますので、症状のある方には検査をおすすめします。
また、症状がないかた、時間が無く検査の受けられない方も、せめて便検査だけは定期的に受けることをおすすめします。

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食道胃静脈瘤

Q.肝硬変と食道胃静脈瘤について教えて下さい

肝疾患が進み肝硬変になると、高率に食道や胃に静脈瘤を併発します。胃腸の静脈血は門脈という血管から肝臓に入り、肝臓から肝静脈をとおり心臓に血液が帰ります。
これは胃腸で吸収された栄養分を肝臓に貯蔵させるための機構です。
ところが肝硬変などで、肝臓が硬くなると、この門脈血が肝臓に入ることができなくなり、肝臓へ入るべき血液が行く手を失うため、血液が迂回路を通って心臓に還るようになります。
食道や胃の静脈瘤は、この迂回する血管が発達し形成されるものです。

肝硬変が恐れられる理由は肝臓の働きの悪化や肝臓ガンのほか、約8割が食道静脈瘤を合併し、それが破裂しやすいからです。

胃カメラでみると、数本の静脈瘤や、破裂の危険を予知する発赤所見などが観察できます。
静脈瘤に対する内視鏡治療は日本が世界で最も進んでおり、破裂を予防するための内視鏡治療も積極的に行われています。

静脈瘤が大きくなると破裂し、大量の吐血をきたす場合があり、生死にかかわる場合もあります。
静脈瘤治療の適応判断は高度の専門性を必要としますので、慢性肝疾患の方は定期的に専門医で検査を受けることをおすすめします。

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